三枝博士
三枝博士のおしりクリニック
その日帰り手術、大丈夫ですか?
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1.その病気、本当にジオン注射の適応ですか?
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ジオン注射の適応は「排便時に脱出し自分でもどす必要がある内痔核」のみです。これらの症状が継続的にありますか。その診断はしっかりついていますか。一回血が出たくらい、少し血が出るくらい、裂肛、外痔核があるくらいではジオンの適応ではありません。排便時に鏡で自分のおしりを見て脱出があるか確認して下さい。また、内視鏡のみでは内痔核は充分に観察できません。怒責診断といい、しゃがんでいきむ診察をしてもらいましたか。専門医でもこれをしないと分からない場合があります。
診察も便通管理もそこそこに診断名も告げられずに注射の日取りが決まってしまうことはありえないことです。日帰りだからまあいいやなどという気持ちで必要のない治療を受けないで下さい。
2.日帰り手術を受ける際に必ず確認して欲しい項目
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  1. 夜間、休日の緊急の診療体制は整っているか。いつでも手術後の患者さんの合併症の対処ができるよう医師看護師が待機しているか。
  2. どういう手術をして、どのような術後合併症が心配されるか。入院と比べて遜色ない治療効果が得られるか。マイナス面はないのか。
  3. 術後全く普通の生活ができるのか。安静を保たなくて不利益はないのか。
  4. 便秘治療、排泄管理は術前にできているか。大腸検査は必要ないか。
  5. 排泄の注意点、傷の処置の仕方はきちんと教えてくれるか。
  6. 手術の時間帯(朝早ければ術後の観察時間が長く安心です)
以上の項目がクリア出来ていなければ安全な日帰り手術をすることは出来ません。
3.その情報信用できますか?
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インターネット、テレビ、週刊誌などで報道される日帰り手術の情報はメディアが視聴率や販売部数を得るためにさりげなく偏っています。すべての肛門疾患が注射と日帰り手術で治るような印象を受けてしまいます。また病院の宣伝という側面もあるのでうのみにするのも危険です。日帰りで済むから仕事を休まなくていい、注射だから切らないので痛くない、患者さんが望むことを宣伝すればとりあえず患者さんは集められますから。本当はそこから後が問題なのですが。
4.日帰り手術だからこそ慎重に、病状と生活状況を見極めて
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日帰りか入院か以前に手術した後何が問題になるのかです。術後は痛み、出血、感染を防止し、創治癒を促進する排便管理の習得が必要不可欠です。
治療技術の進歩やALTA、ジオンという硬化剤(〜最近話題の治療法、PPH,ジオンについて〜参照)の登場によりだいぶ治療にかかる時間が短縮され(10年前までは基本的に2週間入院が常識でした。)合併症も減りましたが、おしりの手術はそう簡単なものではありません。すべてのおしりの病気が日帰りで治療可能ならばなぜ入院施設をもっている病院が存在するのでしょうか。日帰りではやはりできることに制限があります。医師が病室をもつのが辛いし休みが欲しい。だから日帰り手術では困るのです。私どもは病室を持つため約90年ほぼ無休で働いています。
当院でも日帰り手術を行っていますが実際には痛くて仕事には行けず家で寝ていた。仕事に行っても痛く、ガーゼ交換や排便で困った、結局はじめに時間をしっかりとって治した方が早かったという患者さんが時にみえます。
どんな手術でも術後心配なことは痛み、出血、感染です。痛みは当日夜が最も強くなりますので夜間を通した観察が原則で、医師看護師が近くにいることがベストなのです。命に関わらない疾患は軽く考えられてしまいます。だからこそ慎重にやりたいのです。
当院では患者さんと相談して無理のない治療計画をたてます。病状と患者さんの状況を鑑みて日帰り手術もジオン注射も可能です。仕事が終わってからの夕刻入院や週末の短期入院などの方法もありますのでご希望を医師に伝えて下さい。
5.最近の患者さんの治療に対する考え方の変化
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30年前、私が医者になった頃は「病気になったら治療に専念して入院してでもしっかり治す」と考えられましたが、昨今では利便性を何より優先する時代になり「病気は日常生活の合間に治す」という考えに変わりました。万物は流転するといいますが、世の中変わるものです。一つしかない大事な体を治すスタンスとしてどちらが正しいでしょうか。
6.日帰り手術の歴史
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私どもはおしりの病気の治療に90年近く携わっていますが、いったい今までいくつの「切らない、痛くない、短期間で終わる」という謳い文句の、患者さんにとって都合のよい治療法が出ては消えたことでしょう。歴史的には腐食療法、冷凍療法、赤外線療法、近年はレーザー焼灼、PPH法などいずれも一時の流行のようなものでした。