三枝博士
三枝博士のおしりクリニック
正しいおしりの治療法を学ぶ
最近話題の治療法、PPH,ジオン®について
〜"ばら色の治療"はあるか〜
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PPH
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PPHとは内痔核とその少し上の直腸粘膜を輪状に特殊な器械を用いて切除し、その吊り上げ効果により脱出防止を狙う方法です。
手術後の痛みと出血が少なく、そのため入院期間が短く、経済的にも安く、社会復帰も早いという理論です。
しかし、この方法には、切除不要な健常直腸粘膜を切除してしまうのに、切除が必要な痔核が十分に切除できないという決定的問題点があります。
痛み、出血も皆無ではありませんし特別安価でもありません。
また、将来直腸ポリープや直腸癌に罹った場合、診断治療に支障を来たす懸念があります。
さらに、皮膚でも内臓でも人間の体は地球の重力によって下がる傾向にあり、吊り上げ効果が永続的なものか疑問です。
年とともに上がるのは血圧くらいのものでしょう。
また、最近の手術方法ですから長期成績がありません。
手術が上手く出来なかった場合、修正が困難です。現在専門医は内痔核に対してこの術式はほとんど用いません。
この方法はイタリアで考案された方法で老人性の直腸粘膜脱には有効な方法です。
硫酸アルミニウムカリウム+タンニン酸局所注射(商品名:ジオン®)
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この注射は中国で以前から行われていた施術で、強力な炎症惹起物質を内痔核〜周辺組織に注射して組織を硬化させ、脱出を抑制するという方法です。
上記治療と同様に注射後の痛みが少なく入院期間が短くて社会復帰も早い、経済的にも安価で済む、という話です。
痔核一箇所につき約3〜10mlの薬液を注射、マッサージしますので健常部分にも浸透します。
稀に予測不能の重篤な合併症をおこすことがあり、特に感染で重症例があります。
さらに、効果が不十分だった場合、再注射をするとか(2回射つと根治手術の保険点数を上回ります。)、後日手術が必要になることもあります。
専門諸病院の報告ですら再発率は概ね1年で16%といわれています。専門医としては看過できない数字です。 きちんとした切除手術を行えば特殊な事情を除けば 1 回の手術でほぼ完全に治せます。なかなかばら色の治療はないものです。
上記PPHと同じく本邦では最近の治療法ですから長期成績がありません。
この治療法は外来ですむ、痛みが少ない、治療費が安価など患者さんの望みを満たす要素が多いので安易に行われてしまう傾向があります。
十分な問診、内診や怒責診(いきんだ状態で診察をすること)をしないで、出血や脱出などの痔核の状態を確認せずに施行されないよう注意して下さい。痔核の脱出がなければ施行の適応ではありません。注射療法ありきの診療には気を付けて下さい。
当クリニックの考え
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これらの方法に対して従来の手術は実にシンプルで、病変部のみを確実に摘除し健常部分は温存されます。
合併症も出血と感染に集約されてその対処法も縫合止血、切開排膿と確立されています。当院ではこの信頼度の高い方法もジオン注射も行います。勿論日帰りも可能です。
ところで、例えば癌や心臓病をわずらって治療を受ける時に、入院しないで治す、出来るだけ安価に済ませる、ということを至上の目標、絶対条件にするでしょうか。私だったら、体が全ての資本ですから、まず、完全に治したい、そうした上で、できれは短時間に安価でと考えます。どうも私には「命に関係のないおしりの病気位で・・・」という軽侮思想が背後にあるように思えて残念でなりません。早く社会復帰してもらう、極力安価に抑えるという発想は患者さんに言われる前に、本来、医者の側に当然の事としてなければいけないものです。